工事現場の警備員不足問題。

東洋経済求人倍率は99.9倍!!深刻な交通誘導員の不足」(http://toyokeizai.net/articles/-/182408

道路工事などの現場で必要となる交通誘導員が不足している、ってお話し。

職人・技能工の人手不足で工事が大幅に遅れたり人件費が跳ね上がったり、なんて話はあちこちで耳にしますが、実はこっちの方が深刻で、近い将来、もっと大きな問題になってくる可能性を見ておかないといけません。


実は私、この業界の経験者です。
現場で働いたこともありますし、本部業務にも携わったことがあります。

もう20年近く前の話ですが、その当時から高齢化・人手不足は常態化してましたが、東北・熊本の復興事業に東京オリンピック関連、さらに全国的なアパマン建設ブームなどで、ここにきて一気に表面化してきた感じでしょうか。


ちなみに私が所属していた会社は某政令指定都市とその近辺限定の営業エリアで所属警備員が250〜300人ほど、一日の稼働人数は150〜200人ほどの規模。

実働8時間で日給は8000円+交通費ですので、ひと月25日で計算しますと20万円+交通費。
税金やら何やらさっぴかれて、手取りで「月20万に満たない」ってのはまぁそんなもんかな、というところです。
むしろ日給8000円ならまだマシな方で、自力で仕事をとってくる力のない零細業者だと7000円とか7500円レベル。
前日に急な増員要請とかが来て、どうしても対応しきれない時など、1000〜2000円くらい抜いて、こういう零細下請けに丸投げしてしのいでました。
(あ、法的には下請けはアウトなんですが、まぁそこは大人の事情・・・ 私の会社だけではなく業界では当たり前に行われてました)

この給与水準ではやっぱり厳しいですよね。
しかも繁閑期で差が激しく、3月の期末なんかは仕事が全然少なくて、半分近い警備員が仕事にありつけずお休みまたは自宅待機・・・なんてことになります。
警備員の9割がアルバイトなんで、当然、休みでは1円の給料も発生しません。

発注元は少しでもいいスタッフを求めてきますから、「みんな公平に、順番に休みをとって〜」なんてことになるはずもなく、優良スタッフは繁閑期関係なく仕事にありつける一方で、その割を喰らって出勤日が片手で足りるようなスタッフも。
(ま、そこまでいくのは少なからず自業自得な面もあるんですが・・・・)


そんな状況なんで、どうしてもまともな人材は定着せず、70歳とか借金まみれとか、「他に行くあてがなくてやめるにやめられない」人ばかり残ってくることになるんですよね。
家計のやり繰りが月給払いでは回り切らず、給料は週払い・日払いな人も少なくありませんでした。
「正社員採用してほしい、各種社会保険つけてほしい」
って要求してくる人もいましたけど、
「正社員だと日払いは無理ですけどいいですか?」
の一言で簡単に撃退されてました(汗)。


でも、この状況を改善するのもなかなか難しいんです。

こういう記事が出るとすぐ、「警備会社が中抜きで搾取してる! もっと給料上げるべき!!」という話になってしまうんですが、内情を知る立場で言わせてもらうとそんな単純な話ではありません。

私の所属企業では発注元との契約は実働8時間で14000円。
でも、私が在籍していた期間中、その14000円で契約できたこと、って正直、記憶にありません。
ライバルとの競争になってしまいますので13000円、12500円、一番ひどい例では10500円なんて契約もありました。

けっこう薄利ビジネスなんです。

そしてこの業界特有の問題として、現場スタッフの質の問題があります。


言葉は悪いですけど、あえて言っちゃいます。
まともな人も少なからずいますけど、文字通り「社会の底辺」な人も少なくないんです。
経済的な意味だけでなく、人格的な意味でもね。

服装、タバコ等、勤務態度の問題に寝坊、無断欠勤や近隣住民とのトラブル。
200人規模ともなれば「トラブルのない日などない」感じで、営業社員も、本部スタッフも対応に振り回されることになります。
発注元への謝罪・賠償も含め、正直、「もっと中抜きしないと利益出ねーよ」って感じ。

だって営業部長の月給が30万でしたから・・・
あ、でもワンマンオーナーな社長の月給は一桁多かったです(汗)
そうか、そこ削ればいいんだw

ま、オーナー社長の言い分とすれば、
「会社の立ち上げ期には余分な人件費払う余裕がなくて最低限の人数でやってたから警備員が確保できない時には自ら現場に立った。
2現場ハシゴしてその合間に営業の仕事もこなして、深夜に帰社して経理業務やら事務作業を終えて仮眠取って翌朝また次の現場、なんて状態もこなして拡大してきた結果、今がある。
このくらいの成功報酬がなけりゃやってらんねーよ。」
ってことでしょう。

別会社で立ち上げ期を経験した身としては、その気持ちも分かる気がします。
(その苦労を知りながら「成功報酬」にありつく前にやめてしまった私って完全に負け組www)


結局、発注元がもっと出してくれないとどうにもならないんですよね。
アベノミクス以降、需給がひっ迫してますので、私がいた頃よりは出してくれてると思いますが、それが末端の警備員の給料にまで波及してくるレベルには届いていないんでしょう。

案外、日本経済の失速はこんなところから始まるのかもしれません。

先日話題になった宅急便ドライバーの問題は、ただの余震で、そんな話が警備員はじめあちこちの業界で噴出し始め、それが呼び水になって「うちの業界も」「うちの業界も」みたいな感じで収拾不能になる、とか。

その時、そんなブラックな業界で働く正社員の皆さんの運命はどうなるんでしょうね。

それによって給与水準が引き上げられ、勝ち組となるのか。
会社そのものが存続できなくなって放り出されるのか。


少なくとも、後者であった時に何か対応策を用意しておく必要は絶対にあると思います。


てことで結論はやっぱり今回も同じです。

「終身雇用の時代なんてもうとっくに終わってんだよ」
ってこと、ちゃんと認識しましょうね、と。


他の会社に就職できるようなスキル・経験を意識しておくとか。
株や不動産、週末起業など、副収入を確保しておくとか。
会社が突然倒産してもしばらくしのげるだけの貯蓄は確保しておくとか。

過大なローンを組んだりせず、身軽にしておく、なんてのもありますね。









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