借金は悪?

ブックマークしていつも拝読しているブログの一つで、ちょっと考えさせられた記事がありました。

The Arts and Investment Studies 様
http://arts-investment.blogspot.jp/2016/12/blog-post_12.html
「借金は悪に決まっている」


問題提起の意味も含めて、あえて断定形にしておられるんだと思いますが、やっぱりそこまで言い切ってしまうと、ちょっと引っかかるものがあります。

私は信用取引もやりませんし、不動産投資も小規模現金買いです。
なので、この方の意見には少なからず共感できる部分もあります。

でも、やっぱり借金によるレバレッジのメリットを全否定してしまうのも違和感があるんですよね。


要は使う人がそのメリットの裏側にあるリスクをしっかり認識できているか、そしてそのリスクをしっかりコントロールするスキルを持っているか、だと思います。


「他人に借金を勧める」ことの無責任さについては、完全に同意です。

現状、不動産投資の世界では質の悪いコンサルさんが大量に活動しておられます。
「○○大家塾」「△△投資塾」みたいなのをつくり、本を出版して肩書に箔をつけ、無料セミナーを開催して参加した初心者の中から高額の融資を引ける高属性のサラリーマンを囲い込み、見た目だけ高利回りなRCマンションをフルローンで買わせる・・・

そんな方が一人二人ではなく活動しておられるのは紛れもない事実です。

ただ、これは「借金が悪」なのではないと個人的には思ってます。

コンサルさんの悪質さは言うまでもありませんが、騙される投資家の側の問題は「借金をすること」ではなく、そのリスクをしっかり認識できていないことです。
(ついでに「不動産投資」そのものもまともに理解できていないことも)


「個人にとって借金は悪であるということは、ほぼ経験論的に証明されています」
とありましたが、私はそれを証明した文献を見たことがありません。
個人にとって借金が無条件に悪になる、というのも違和感があります。

例えばまだ貯金もほとんどない金欠の新卒リーマンがPCをローンで買う場合。

PCを買えるだけの貯金が積みあがる、またはボーナスが支給されるまで待てば借金をせずに買うことができますが、私はこの場合、借金をして先に買ってしまう、という選択は十分に「あり」だと思います。
金利分を余分に支払うことによって、数カ月先まで待たなければならなかったであろうPCを今日から使うことができる。
金利分を代価に、その時間を買う。

これは広い意味で言えばレバレッジのメリットを享受しているわけです。

問題は借金そのものではなく、そのリスク。
例えば金額的に過大なリスクをとっていないか? とかそういう点をしっかり考慮し、そのリスクをコントロールできるなら問題はありません。

この場合、正社員として毎月20万程度の安定収入があるなら、15万とか20万レベルのローンを組むことはリスクとしては許容範囲と言えるでしょう。
そのリスクと引き換えのメリットとして、今日からすぐにPCを使うことができる。

これはいわば、借金が有益に働く例と言えます。


逆に、住宅ローンがやや肯定的に描かれているように見えるのは少なからず違和感があります。
自宅のためであれば、借金は許容範囲なのでしょうか?

私は住宅ローンを組んでの自宅購入には否定的な意見を持っています。
上のPCの例と比べて、金額的に過大なリスクをとっているように思えるからです。

自宅のために住宅ローンを組むくらいなら、借金をして不動産投資をする方がよっぽど有益だと、個人的には思います。
(もちろん、不動産投資に関して十分な知識を身につけた前提での話ですが)


勘違いされている方が多いですが、ローンを組んでの自宅購入も、まぎれもない不動産投資です。
入居者を探す代わりに自分が客として入居し、自分が自分に家賃を払っているだけです。

年収の10倍とかのレベルで、35年もの間返済し続けなければならない過大なレバレッジをかけ、それを分散効果も無視して不動産に一点集中投資しているだけです。
終身雇用も名ばかりとなった今の日本で、これは明らかにリスクの取りすぎです。


その一方で、しっかりと勉強して十分な知識・経験を身につけた上での借金であれば、けっして頭から否定すべきものではないと思います。

私は現状、不動産投資に関してはまだ経験も浅く、レバレッジのリスクを十分にコントロールできる自信はありません。
拡大スピードよりも「致命傷を負わない」ことを優先していますので、まだしばらくは家賃収入も手をつけず、しっかり貯金して、現金買いで2件目・3件目と時間をかけて買い進めていく予定です。

でも、その過程で様々な失敗やトラブルを経験し、スキルも洗練されてきたなら、レバレッジを有効活用して拡大スピードの加速を図ろうと思っています。

いきなり一億円のRCマンションをフルローンで、なんてことはしませんが、ローン支払いの残っていない物件を数件保有し、また時価総額で数件分に相当する株式を保有している状況で、ただ現金が一件分に届かない(または届くけど現金は温存したい)場合に、その一件分をローンで購入するならば、全く問題はありませんよね。

要はメリットとデメリットの比較と、そのリスクコントロールの問題なんです。


長々と書いてきましたが、たぶん、この方と私と、この問題に関しての価値観はそう大きくは違わないと思ってます。
「借金を原資に海外不動産投資(なんてダメ)」
「素人衆に安易に借金を勧めるのは犯罪的行為」
この辺は全面的に同意です。

文中で問題にしておられるのは、「意識高い系」の方で借金のメリットにだけ着目し、その裏側のリスクを過小評価する、または全く無視して安易に借金をしてしまう人たちと、そういう方々をカモとして自分の収入に換えておられる方々の悪質さでしょう。
それらが「腹に据えかねる」のも全く同じです。

ただ、そこからの結論が「借金は悪」になってしまうのはちょっと違和感を感じてしまったわけです。
借金のレバレッジにはやはり捨てがたい大きなメリットがあります。
繰り返しになりますが、問題は借金そのものではなく、そのリスクをしっかり認識することと、そのリスクをコントロールすることなんだと思います。



P.S.
「意識高い系」の皆さんがよく口にする
「借金には良い借金と悪い借金がある」という言葉。

私が思うに、借金には
「良い借金」
「悪い借金」 そして
「一見、良さそうに見える借金」があります。

一番上と一番下をしっかり見極めることができたなら、資産は加速度的に増加します。
それを見極めるのは決して簡単ではありませんが、その努力を頭から放棄してしまうのはやはりもったいないなぁ・・・・なんて思ってしまうわけです。