安保法案可決だそうです。

共産党員を両親に持つせいか、私の身近には安保法案に絶対反対!!(それも本気で「日本が数年後には戦争に巻き込まれる!!」という悲壮・壮絶な危機感を伴って) という方が多いです。

でも、彼らが本当に必死でこの法案への反対を声を大にして訴えかけているにも関わらず、その他大勢の人の心には全く響かないようです。


横から見てると、いろいろと勉強になりますね。
どんなに情熱をもって取り組んでも、ポイントが絶望的なまでにずれてると全く結果につながらない、ってこと。
というか、まずどういう結果を求めたいのか、を明確にして、どうすればそれが実現するのか、相手の心に届くのか、というのを客観的に考えることの重要性。
サルみたいにただ自分の主張を絶叫するだけじゃ、全く話にならない、ってのは彼らを見てると本当に痛感させられます。


何がずれてるって、彼らの少なからぬ人たちが「戦争の悲惨さ」をこれでもか、ってくらいに訴えかけてること。

安保法案や改憲に賛成してる人たちの多くは、戦争の悲惨さは十分に理解してますよね。
だって、戦争がしたくて賛成してるわけじゃないですから。
「戦争が悲惨なもの」「戦争は嫌」ってのはすでに共有できてるわけですから、そこへ「戦争ってこんなに悲惨なものなんだ!!」って訴えたところで、「あぁそうだよね」「知ってるよ」で終わりです。

賛成派が問題にしてるのはそこじゃないんですよね。



問題は憲法9条が時代の変化についていけなくなってしまっていること。


私が学生時代は平和憲法の意義は、国際的にも十分認められ、尊重されていた記憶があります。
PKOなどの国際協力の場についての国際合意項目の中に「憲法等の制約で軍事面で協力できない国は人道・資金面などで協力する」というような一文を見た覚えがあります。
当時は少なくとも、「憲法9条があるから日本は軍事面では一切協力できない」で通ったわけです。

それに加え、アメリカが世界の警察として君臨していたことも大きかったでしょう。
えこひいきはするわダブルスタンダードだわ自分に都合のいいときだけ正義を振りかざすわ、マフィアの親玉、の間違いじゃねーのか? くらいのひどい警察でしたけど、まがりなりにも世界を力で一定程度は安定させていたんです。

そのアメリカが凋落し、中国など新興勢力が力をつけ、アルカイダやISなど今までとは根本的に違う脅威が出現した中で、アメリカの力だけに頼って世界の安定を守るのは難しくなってきたこと。
そうなると(実質的には)世界有数の軍事力をもち、世界3位の経済力を持つ国には大きな責任と貢献が求められるのは当然のこと。

イラク戦争で90億ドルを拠出しながら感謝もされなかったことからもわかるように、もう「金さえ出しておけばいい」は日本には許されないんです。


そして北朝鮮やロシア、何よりも中国の脅威の現実化。


イラクのPKOでは最低限の装備しか許されない自衛隊のためにオランダ部隊が護衛についてくれました。
笑い話にしか思えませんが、他の軍隊に守ってもらわなければならない軍隊、って何、って話です。

しかも、そのオランダ部隊が攻撃された時に自衛隊は助けに行くことは許されなかったんですよね。
自衛隊を護衛してくれているのに、その部隊が攻撃されたら傍観してるしかない。
自衛隊自体に攻撃が及ばない限り、傍観してるしかない。
実際にそんな事態が発生すればオランダ国民が激怒するだけでなく、全世界が呆れ果て、日本の国際的評価は地に堕ちたことでしょう。

日中間でも、例えば尖閣をめぐる折衝の中で、アメリカ軍機が攻撃された場合、自衛隊はこれを助けることは難しいんです。
でも、それでアメリカ軍機を見殺しにすれば、おそらく日米同盟がそのままに継続されることはないでしょう。

こんな状況を放置していいのか、っていうのがそもそもの出発点なんです。


で、憲法9条を撤廃すれば、これらの問題は解決するわけですが、その場合、また別の心配が発生します。

例えば石原さんみたいな極端な人が何かの間違い(?)で首相になった場合、「勝負はイモ引いたら負けじゃ!!」みたいなノリと勢いだけで戦争に突入してしまう心配。
または現場の成行きで軍事衝突が勃発し、そこから引くに引けなくなってそのまま本格的な戦争へ突入してしまう心配。
あるいはそれを確信犯的に軍部が実行し、軍に国家が戦争へ引きずられていってしまう心配。

ていうか、この国はそれを実際に盛大にやらかした過去をもつわけですから(汗)


上記のような問題を解決しながら、平和主義とシビリアンコントロールをいかに確保するか、それこそが問題なんです。
戦争の悲惨さ、日本を戦争できる国に、みたいな話が論点じゃないんです。



各種メディアの世論調査では、改憲も安保法案もだいたい「反対がやや優勢」みたいですが、私が思うに、上記のような問題をしっかり認識し、改憲の必要性を感じている人はもっと多いのではないでしょうか。

改憲には賛成だけど、安倍さんに任せるのは不安」「どんな改憲になるか分からないし、具体的な改憲案(新憲法案)を見せてもらってから判断したい」って人が「反対」側に少なからず含まれているように思います。


「何もわかってない世の中の人たちに教えてあげなければ」っていう上から目線で、幼稚園児レベルの現実度外視した主張、それでいてそもそもの論点が絶望的にずれている、と。
これでは彼らの主張が仲間内で「そうだそうだ! キミはいいこと言うなぁ」と褒めてもらえるだけに終わるのは仕方ないと言わざるを得ません。