働き方改革、ちょっと待って。

最近、働き方改革がどーだこーだと話題になってるみたいです。
安倍さんが一生懸命旗振っておられますし、まぁそういう方向に向かっていくんでしょう。

方向自体は間違っていないと思います。

でも、なんか議論がめちゃくちゃ薄っぺらいというか、単純化されてしまっているように感じるのは私だけでしょうか。

ちょっと立ち止まって、流れに逆らった意見にも少しだけ耳を傾けていただければ、と思います。



私は現在、某上場外食チェーンでのアルバイト生活で日々の生活費を稼いでいます。
(配当金は全部、次の株に回っていますし、家賃収入も一切手をつけず、次の物件のために積み立てています)

この会社でも世間の流れに乗ってか、残業時間の規制がかかるようになり、また最近話題のインターバル制度が近い将来どうこう・・・なんて話も聞こえてくるようになりました。

これって労働者にとって本当にいい話なんでしょうか?
現実に起こっていることは誰にとっても得にならない、アホすぎる状況なんですが。



まず、アルバイト・フリーターと正社員を全部ひとくくりで論じることにそもそもの無理があります。
ブラック企業に酷使され、消耗している正社員は確かに少なくないんでしょうが、フリーターはそれぞれ、まるで違う個人事情を抱えています。

適当に食っていける程度稼げればいい、という人もいればがっつり稼ぎたい!!と言う人もいます。

シングルマザーで子どもを3人も4人も抱えて、とにかく1円でも多く稼ぎたい!! という人。
自分の店を持ちたい!! などの夢に向かって、1円でも多く、一日でも早く目標額を稼ぎたい!! という人。
あるいは私のように「もっと株買いたい! 不動産も買いたい!!」なんて人も(少数ながら)いるでしょう。

そういう人たちにとって、残業規制は邪魔な足かせでしかありません。

まだ大丈夫だから、働きたいと言ってるんです。
自分の意志で、休みより稼ぎたい、と言ってるんです。
休ませてもらえないんじゃありません。
追い込まれてもいません。
辛くなれば自分の意志一つでいつでも休みはとれるんです。

過労死がどうのこうの、と言われてますが、個人的には過労死ってのは多くの場合、体よりもまずメンタルがやられるもんだと思ってます。
明確な目標や目的があって、自分の意志で頑張っている分には、人間の体ってけっこう無理がきくもんです。
(「私、いったい何のために働いてるんだろう・・・こんな生活がいつまで続くんだろう・・・」みたいなのが逆パターンでしょうか)


まぁそういう話になると、「それを認めると労働者本人の希望、という表面的な形式だけ整えて長時間労働を強いる企業が出てくる」的な反論が返ってくるんでしょうが、そもそも論を言えば、ブラック企業なんてとっとと辞めてしまえばいいんです。
労働者がみんな辞めてしまえばブラック企業なんて存続できません。

「割にあわない」と思えばとっとと辞める。
それが当たり前になれば、企業は給与や労働環境などの点でもっと魅力を高めなければ人手を確保できなくなりますし、中途半端な残業規制なんかよりよっぽど労働者にとって幸せな社会になるでしょう。



・・・えっと、すみません、話を広げすぎました。

日本人が働きすぎなのは事実ですし、改革の方向性自体は決して間違ってないとは私も思ってます。

話を戻しましょう。
その方向性は間違っていなくとも、物事には順序ってものがあります。


私のバイト先の例で言いますと、もっと稼ぎたいのに、予定も空いててシフトできるのに残業規制でシフトできないアルバイトが続出してます。
そして、それによって埋まらないシフトの穴が大量に発生しています。
稼げないから、ということで辞めてしまう人もいます。
今まで週6とかでシフトしていた人が一人辞めたらその穴を埋めるのがどれほど大変か、簡単に想像つきますよね。
インターバル制度なんてものが導入されれば、さらに拍車がかかるのは目に見えてます。

このシフトの穴を埋めるのは言うまでもなく、社員の責任です。
が、その社員もフル回転で働いていて残業時間の上限に引っかかってしまっています。

さぁ入れる人がいない。
でも店を閉めるわけにはいかない。
(自分の管轄店舗で「人員確保できずに閉店」なんて大変な責任問題です。)
自ら埋めようにも残業時間の上限いっぱいになっている。

さぁどうするどうなる社員さん?





結論は一つですよね。



社員が自らシフトして埋める、です。
ただし、タイムカードは押さずに。


シフト入れる、しかも入りたい人がいるのに入れない。
その穴を、入りたくない人が無給で働いて埋める。

まさに「誰得?」状態です。



めちゃくちゃ単純な話ですよね。
残業規制にせよ、インターバル制度にせよ、労働に規制をかければシフトを回すのが厳しくなるのは当たり前です。
こういう改革をしたければ、まず第一歩は余裕を持った人員の確保、です。
それを怠ったまま、うわべだけの改革に突っ走れば、あちこちに歪が生じてくるのは当然でしょう。

結果、本来は労働者のためのはずだった改革によって、労働者がさらに過酷な状況に追い込まれるというアホな話になってしまいます。



これは私のバイト先だけで起こっている現象ではない、と、私は自信を持って言い切れます。
企業の中には、むしろ確信犯的にこの状況を認識した上で表面的な体裁だけを整えようとしているところだって少なくないでしょう。

安倍さんはじめ、今この制度を議論しておられる皆さんの目にはこの現実は見えているんでしょうか?
こういう話もしっかり認識した上で、労働者にとって本当に助けになる改革を考えていただけないものか、と切実に願います。